時効の援用通知書を内容証明で送ったらその後にすべき対応はある?気になる疑問を弁護士が解決

しかし、「時効の援用は行ったが、本当に時効を迎えたのか」と不安に思う方もいるでしょう。
特に、援用通知書の送付を弁護士に依頼した場合、「自分は何もしなかったがそれでいいのか」と不安が強くなりがちです。
今回は、時効の援用通知を内容証明で送った後の対応や、時効の援用後にトラブルが起きた場合の対処法を紹介します。
借金の時効について知りたい方や借金の時効に関するトラブルの解決方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
ご相談ください
時効の援用通知書を内容証明郵便で送ったあとは何もしなくてよい?
結論から言えば、何もする必要はありません。
なぜなら、借金の時効が確実に過ぎている場合、時効の援用通知書を内容証明で送った後、債権者がアクションを起こす可能性はほぼないからです。
債権者が借金の時効を成立させたくない場合、時効の援用を行うまえにさまざまなアクションを起こしてくるはずです。
したがって、時効の援用通知を送る段階まで来たら債権者は借金の時効を容認していると考えて良い場合がほとんどです。目安として、半年ほどなんの音沙汰もなければ、時効はほぼ確実に成立していると考えられます。
自分から余計なアクションは起こさず、静かに経過を見守りましょう。
ただし、以下のような場合はアクションを起こされる可能性があります。
- 時効が完成していなかった
- 過去の契約書などが不要になったので返送されてきた
過去の書類が返送されてきた場合は、そのまま処分してかまいません。
個人情報が漏れないようにシュレッダーにかけるなどして処分してください。
例えば、「古い借用書などを返したいから直接会いたい」などの申し出は断ってください。
なんらかのトラブルに発展する恐れがあります。必ず郵送で送ってもらうか、相手に処分してもらうように依頼しましょう。
時効が完成していなかった場合は、債権者が時効の更新を申し立てるなど何らかのアクションを追加で起こす可能性があります。
特に、以下のような場合はアクションを起こす可能性が高いでしょう。
- 債務者の住所がわからず、債権者が長年探していた
- 借金の額が多く、可能ならば借金を返済してほしいと考えている
- 債権者が借金の存在を債務者からの時効の援用通知で知った
特に、違法な業者など債権者が強引なやり方も辞さない場合、個人が対応すると新しいトラブルに発展する恐れがあります。できる限り早く弁護士に相談してください。
もし、債権者側も弁護士に依頼している場合、弁護士同士の話し合いで決着が付くケースもあります。
時効が完成したかどうか確認する方法
時効の援用通知書を内容証明郵便で送付した後、時効が完成したかどうか確認する方法があります。
確認できれば安心できますが、その一方でリスクもあります。
以下に時効が完成したかどうか確認する方法を2つご紹介するので、リスクを確認したうえで実行してみてもいいでしょう。
ただし、弁護士や司法書士に依頼している場合は、まず弁護士や司法書士に相談してください。料金はかかりますが、手続きの確認を代行してくれる場合もあります。
数ヶ月おいてから信用情報機関に情報開示請求をする
借金が時効になって消滅すると、信用情報機関に記録されている借金の情報も消されたり訂正されたりします。
したがって、以下3つの信用情報機関に時効の採用通知書を送って数ヶ月後に情報開示請求を行ない、借金の情報が消されたり訂正されていたりした場合は、時効が成立していると考えていいでしょう。
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
なお、この3つの機関は情報を共有しているので、1つの機関で削除や訂正がされているなら安心です。
情報開示請求は、スマートフォンで専用アプリをダウンロードして行う方法や、郵送・窓口で開示請求を行う方法があります。手数料は1,000~1,500円で、情報が登録されていない場合でも返還はされません。
ただし、信用情報機関へ情報の削除や訂正を行うのは、債権者です。
時効が成立したからといって債務者から情報の削除や訂正を求めることはできません。債権者が信用情報機関に連絡をしなければ、情報が削除・訂正されないので注意してください。
個人間の借金も、信用情報機関に記載されないので、この方法は使えません。
つまり、信用情報機関に開示請求を行っても、確実に時効が成立しているのか確認はできないので、注意しましょう。
また、借金を抱えている方の元には「お金を払えば信用情報の記載を書き換えられます」といった勧誘の電話がかかってくる場合があります。しかし、債権者となっている企業以外に信用情報機関へ情報の消去や訂正を求めることはできないので、注意してください。
直接債権者に電話をする(リスク高)
直接債権者に電話やメールをして時効が成立しているか確かめる方法もあります。
しかし、この方法はリスクが高いのでおすすめはできません。
特に、弁護士が債務者に代わって時効の援用の手続きを行った場合、債務者が直接連絡をすると「弁護士ではないから、チャンスだ」と思われ、借金を返すように迫られる恐れもあります。
また、不用意な受け答えをして相手が録音していた場合、時効の更新の了承と取られてしまう可能性があり、さらなるトラブルに発展するおそれもあるでしょう。
どうしても直接債権者に連絡を取る必要がある場合、弁護士に相談して代理人として連絡してください。そうすれば、安心して対応を任せられます。
内容証明を送った後、債権者から連絡が来たらどうすれば良い?
こうしたケースでは安易な自己判断を避け、弁護士などに相談する方がいいでしょう。
なぜなら、債権者の中には時効が完成していないとわかった場合、なんとかして借金を取り立てたいと思う方もいる可能性があるからです。債権者の動きによっては深刻なトラブルに発展する場合があります。
例えば、内容証明を送った後に来る債権者からの連絡の中で、以下の2点は注意が必要です。
- 時効が完成していないという書類が送付されてきた
- 債権者から直接話したいと連絡がきた
前述の通り、こうしたケースでは自己判断をしないことが大切です。
トラブルが発生する前に対処すれば、解決も早まります。
ここでは、債権者から連絡が来た理由ごとに対処法を紹介します。
時効が完成していない旨を知らせる書類が届いた場合
時効が完成していない旨を知らせる書類が届いた場合、まず弁護士や司法書士など法律に詳しい専門家に相談してください。
そのうえで、債権者との交渉を任せるのが最良の選択です。
焦って個人で対処しようとしてはいけません。
時効が完成していない借金は、「時効の更新」や「完成猶予」が認められます。
「時効の更新」とは、時効までの期間がゼロに戻ることです。
たとえば、時効まであと1日だったとしても、「時効の更新」が認められれば成立まで、再度5年~10年待たなければなりません。その間に債権者が過酷な取り立てをしてくる場合や、財産を差し押さえしてくるケースもあるでしょう。仕事や人間関係に悪影響が出るおそれもあります。
また、借金の時効の援用が認められない場合、信用情報に傷がついて住宅ローンが組めなかったりクレジットカードが作れなかったりする可能性も出てきます。
「時効の完成猶予」とは、猶予された期間は時効が成立しない仕組みです。
時効の猶予の期間は厳格に決まっていませんが、6か月前後が目安です。
時効の「完成猶予」や「更新」は、以下のような手続きを債権者が行うと成立します。
時効の更新 | ・債務者が債務のあることを承認した ・裁判が行われることが決定した ・強制執行を行った |
時効の完成猶予 | ・債権者が内容証明郵便などを送って借金の返済を求める ・裁判を起こす ・仮処分や仮差押などを起こす 強制執行の申し立てをした |
時効の「完成猶予」や「更新」の手続きは、債務者の住所氏名がわかっていなければできません。
内容証明を送れば、債権者は債務者の現在の住所や名前がわかります。
また、慌てて債権者に連絡を取った場合、受け答えの仕方によっては遅延損害金なども請求される恐れがあります。
特に、相手が違法な金融業者だった場合、言葉巧みに言質を取られてしまう可能性もあるでしょう。
相手が個人だった場合も感情的になると新しいトラブルの火種になるケースもあります。
債権者から電話がかかってきた場合
債権者から電話がかかってくる理由はさまざまですが、借金の時効が完成していないことを隠して電話してくるケースもあります。
ですから、受け答えを最小限にして「折り返し弁護士や司法書士より連絡いたします」と告げて電話を切ってください。
そのうえで、弁護士や司法書士に相談しましょう。
債権者の中には、言葉巧みに債務者に「債務があること」を承認したと受け取れるような発言を引き出そうとするケースもあります。
不用意に会話を伸ばすほど、そのリスクはアップします。
債権者への対応は弁護士や司法書士など司法の専門家に任せましょう。
言質を取られると、時効の更新が認められる恐れもあります。
また、債権者と直接顔を合わせるのも避けましょう。
債権者によっては債務者を「債務の存在を認めるまで返さない」と脅すケースもあります。
「少しでも返してくればいいから」と少額の金銭を要求する場合もあるでしょう。
しかし、たとえ数百円でも返還してしまえば、「債務を支払う意思がある」となり、時効の更新が認められる可能性があります。相手がどんなに下手に出ても、できるだけ短時間で電話を切りましょう。メールのやり取りなども行ってはいけません。
時効の援用に関する不安を解消するなら弁護士など「プロ」に依頼するのがベスト
時効の援用は自分でも行えますが、間違いなく確実に行いたい場合は弁護士や司法書士など、法律のプロに相談しましょう。
その理由は、自分で時効の援用を行い、借金の時効が成立する年月日を間違えてしまったり、債権者に住所氏名が知られてしまう恐れがあるからです。
また、時効の援用が間違えず行われたかどうか、個人で確かめるのは難しいケースが多いです。
一方、時効の援用の手続き代理を豊富に行っている弁護士や司法書士なら、時効が成立したかどうかも確かめやすく、依頼者も安心できます。
例えば、個人同士で額が多い借金をした場合や、違法な業者から借金をした場合は時効援用の手続きをするにも大きな負担がかかります。一筋縄ではいかず、長々と交渉する必要もあるでしょう。
このような場合にも、弁護士や司法書士は法律のプロであり、特に弁護士は交渉の手腕もあります。弁護士事務所の中には無料相談を受け付けているところもあり、相談のハードルを下げてくれています。
まずは無料相談を利用して、自分の借金は自分で時効の援用を手続きができるのか、弁護士に手続きを代行してもらったほうがいいのかだけでも、確認してみましょう。
トラブルがおきてから相談するより、トラブルを未然に防ぐために相談したほうが解決も簡単で費用も抑えられます。
時効の援用を弁護士に依頼する場合と自分でやる場合のメリット・デメリット比較
時効の援用を自分で行った場合と弁護士へ依頼した場合のデメリットは以下の通りです。
弁護士へ依頼する場合 | 自分でやる場合 | |
メリット | ・全ての手続きを任せられる ・間違いなく、確実に時効援用の手続きを行なえる ・トラブルがあった場合も対処してもらえる | ・費用がかからない ・思ったらすぐに手続きができる |
デメリット | ・手続きを依頼した場合費用がかかる ・弁護士事務所を探すのに時間がかかるケースもある ・相談するだけでも2回目から費用がかかる | ・正確さに不安がある ・トラブルがあった場合対応が難しい ・トラブルが発生した後で弁護士に相談しても解決に時間がかかりやすい |
自分で時効の援用の手続きを行えば、内容証明の郵便代と便せんと封筒の料金だけですみます。しかし、前述したように借金の時効の成立年月日を間違えた場合、新しいトラブルが発生する恐れもあります。
借金の時効の更新や時効の猶予が認められた場合、債権者がより一層厳しく債務の督促をする可能性もあるでしょう。
裁判を起こされたり差し押さえが認められたりすると、財産を失う恐れがあるだけでなく結審まで時間と費用がかかる場合もあります。
多少費用がかかっても弁護士に時効の援用を依頼すれば、確実かつ正確に手続きをおこなってくれます。
ちなみに、時効援用の代行は司法書士にも依頼できますが、司法書士の場合は1件140万円を超える借金には対応できません。借金が多額の場合は弁護士一択です。
なお、弁護士事務所はたくさんありますが、すべての弁護士事務所が時効の援用の手続きを請け負っているとは限りません。弁護士事務所にはそれぞれ得意分野があります。
時効の援用手続きを依頼したい場合は、借金問題の解決を得意としているところを探しましょう。
近年は、ホームページを開設している弁護士事務所も多く、インターネットを使えば簡単に時効の援用手続きを代行してもらえる事務所が見つかります。
初回無料の相談を依頼する場合、時間が限られているので事前にメールで相談したい内容を送っておくか、メモにまとめておくと効率的です。
当事務所でも、時効の援用手続きをはじめとして借金問題全般のご相談や解決のお手伝いを請け負っています。借金問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
今回は、借金の時効の「援用通知書を内容証明で送った後の対応」について解説しました。
借金の時効の援用手続きを弁護士や司法書士など法律家に依頼した場合、債権者が何らかのアクションを起こす可能性は低いでしょう。しかし、自分で時効の援用手続きを行った場合、時効が成立していない旨の書類が送られてくる恐れもあります。
こうなると、時効の更新や時効猶予の手続きを債権者が行う可能性もあり、新しいトラブルが勃発するかもしれません。借金トラブルで信用情報に傷が付くと住宅ローンが組めなくなったり新しいカードが作れなくなったりします。
それを防ぐためにも、時効援用の手続きは弁護士などの専門家に依頼してください。
当事務所でも借金問題解決のお手伝いを行っております。
一般的な金融業者様相手はもちろんのこと、違法な業者との交渉も可能ですので、時効の援用の手続きについて不安がある方は、一度ご相談ください。お客様の悩みをしっかりとお聞きして最適な解決策をご提案いたします。
ご相談ください