いちご白書

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相も変わらずの、山本です。

前回は、1960年台後半から1970年前半の我が国の学園紛争の一つとして東京大学を取り上げましたので、今回は外国である、アメリカ合衆国の学園紛争を取り上げてみようと思います。

この学園紛争は1968年のコロンビア大学の抗議行動及び学生抗議者による学部長事務所の占拠という形を取りました。

そして、これをベースにした「いちご白書」という映画が製作されました。

この映画では、ウエスタン大学という大学が舞台となり、同校構内に予備将校訓練課程校舎を建設しようとする計画が立ちあがります。しかしその場所は近隣の貧しい黒人の子供の遊戯場として利用されていたし、当時ベトナム戦争が行われていた最中で、何より戦争を行うための軍人訓練を目的とするような建物を作ることに反対の一部の学生や教員の抗議が起こることになります。

このような状況下で、この映画の主人公であるサイモンはボート部に所属しおよそ政治的なことに興味を持たない(所謂ノンポリ)学生でした。ただ、大学は抗議活動のため全ての講義も停止していました。その為、サイモンは退屈に耐え兼ね、占拠されている校舎の一つの部屋から食料を調達しようとし、そこで抗議活動を行っている女子学生のリンダと知りあうことになりました。最初は価値観が違う事から、互いに相容れない二人でしたが、サイモンはリンダを好ましくなり、大学に抗議する学生となって、共に構内を占拠することになります。

その為、大学側も警察及び州兵を動員して実力行使を決定し、各校舎の学生は次々排除されていき、とうとうリンダに実力行使が及ぼうとします。そして、これを阻止しようとして、警察隊に飛びかかっていくサイモンの姿を、BGMバフィー・セント=メリーの「サークル・ゲーム」のもとで、ストップモーションを使いラストカットとして描きました。このラストカットは衝撃的で、当時の若者の権力には立ち向かう心情を捉えて、青春映画としては好評を得ました。

なお、タイトルの「いちご白書」はコロンビア大学の学部長ハーバート・A・ディーン氏の、大学の運営についての学生の意見を、学生たちがイチゴの味が好きだと言うのと同じくらい重要さを持たないとして見下したとものと言われています。

ところで、「いちご白書をもう一度」という歌が、我が国で歌われていたことはご存じかと思います。

作詞・作曲 荒井由実 歌手バンバンで結構ヒットした歌です。バンバンのメンバーのばんばひろふみ氏が荒井由実さんの才能に惚れて、彼女に曲を依頼したようです。彼女も学生運動を題材にした歌を描きたいと思っていたようで、両者の意図が一致して、この曲が出来上がりました。

歌詩の内容としては、大学生の頃付き合っていた男女が、昔一緒に観た映画が再度日本に来ることで、過ぎ去った学生時代を思い出すという形式を取っています。彼らが観た映画が前述の「いちご白書」という、いわば権力に立ち向かう学生を描いています。そして、この男性の方は自身も学生運動を行ったようで、デモにひげや髪の毛を伸ばして参加したとの歌詞が出てきます。

ただ、このような当時の学生にある権力に立ち向かうという姿勢も、学校を卒業して社会に出るという時期になれば、おのずと社会生活に組み込まれることになるのが多くの人の現実でしょう。

この様に考えると、何かもの悲しさが感じられる歌なのかなとも思います。

最後に,同曲の歌詞に「就職が決まって髪を切ってきた時」というフレーズがありますが、髪を切るのは就職試験の面接の前ではないのかなと、この歌詞を聞いた最初から感じている次第です。