弁護士の独り言

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弁護士の山本です。

前回、亡くなったプロ野球の長嶋氏のお話を滔々と書いたところ、お読みになった方から弁護士の文章に関わらず、一向に法律に関する話は無かったとのお言葉を頂戴しました。

確かにその通りです。ただ、法律に関することはテレビ等のメデイアでは,高名の弁護士先生が、やれ、何処かの市長の学歴詐称、何処かの県知事のパワハラ等々、法律に関する事象につき毎日のように話されています。

そこで、高名でない弁護士の私は、自分の趣味趣向の路線で独り言を徒然なるまま述べていきます。

先ずは、今年の6月16日に観た邦画の「フロントライン」を取り上げます。

この映画は,2022年2月に、中国で発生した新型コロナウィルスが豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」内で集団感染となり、横浜に乗客乗員371名を乗せたまま入港しました。この事態に対し、かかる新型コロナウィルスに関する専門的な知識がない我が国が、色々な方策を駆使して集団感染を食い止めたという事実に基づいた物語です。

私自身、当時中国で新型コロナウィルスが発生したこと及び感染者を乗せた客船が横浜に入港した事はニュース等で知ってはいましたが、この映画で表現されたような大事であった事は、この映画を観て分かりました。

そもそも、映画のタイトルの「フロントライン」とは最前線を意味するようです。

この最前線とは、新型コロナウィルスに最先端で立ち向かった人たちの事を表しています。具体的には、民間の災害派遣医療チームのDMAT、厚生労働省の役人を含む行政機関、豪華客船ダイヤモンド・プリンセスの乗務員及び患者でもある乗客、報道機関のマスコミ等がまさに最前線にいた人々だと思います。

ただ、映画のストーリーとしては、上記二機関である災害派遣医療チーム及び厚生労働省の役人を含む行政機関をメインとして進行していきます。

そして、民間の医療チームDMATの指揮官を小栗旬が、更にその親友の船内で指揮をする医師を窪塚洋介、同じく船内で働いている医師を池松壮亮、厚生労働省の役人で官僚を松坂桃李が演じています。
ただ、この民間の医療チームは災害が起きた際に派遣されるもので、この新型コロナウィルスに対する具体的な対処法は未だ出来ていない状態でした。

そのような状態であったことから、伝染病に知悉している医師から、対処法の不備を指摘され、その指摘を取り上げたマスコミからも非難される事態に陥っていきました。

一方、厚生労働省の役人にとっては、日本国内にこのウィルスを持ち込まないのが最大の命題であり、両者の間には基本的な部分で齟齬が生じていました。

その為、諍いも時には生じました。しかし、徐々にですがDMATの医師たちに対処法が解明され、船内の病人も減るようになりました。
かように、船内の病人数が減ることで、厚生労働省の役人との関係も一触即発の事態を免れ両者一体となっていき、責任者の官僚の松坂桃李から、人々皆のために働くのが自分の仕事であるという意味の言葉が発せられるような良好な関係になっていきました。
ここで、他のフロントライン参加者のストーリーも、映画では取り上げています。

先ず、ダイヤモンド:プリンセス号の乗客の老夫婦があります。この老夫婦は妻が参加を呼びかけ、豪華客船の旅を満喫していたのが、夫が新型コロナウィルスに罹り、あわや死ぬという事態に陥った夫婦愛を描いています。

次に、この老夫婦の面倒を看ていた女性乗務員は、夫が死ぬかもしれないのは自分がこの船旅を誘ったからだと責任を感じ悲嘆にくれ、船から海に飛び込もうとする妻を説得するなどその職責を十二分に果たしました。

今度は、マスコミ関係です。或る新聞社の女性記者のストーリーです。前述したように当初は医療チームも具体的な対処法が見いだせなかったことから、マスコミの絶好の餌食となりました。ただ、その後具体的な対処法を見つけ、患者も少なくなる事態を目の当たりにした女性記者は、新聞社のデスクにその旨を伝えました。しかしながら、デスクは新聞記事が平穏であることを書いても意味がないと云われ、新聞には掲載されなかったのです。

その後、自らも最先端でこの事案に立ち会った女性記者が、同じくこの新型ウィルスの最先端に立ち、色々な対処法を施したDMATの指揮官にコメントを求めました。

この女性記者は、横浜に入港した豪華客船の乗客に多くの患者が出てしまうような困難に、DMATの医療チームが必死に立ち向かっていたことを、当初から見ていました。その為、指揮官のコメントのひと言ひと言が胸に沁みるものであり、コメントを述べてくれたことに感謝の意を表しました。

最後に、厚生労働省の官僚については、次のような参加がありました。それは、客船の乗務員の中に、コロナウィルスに罹患し、ベッドに寝ざるを得ない状態に陥ったフィリピンの女性がいました。そこで、客船勤務の医師が、彼女に何か望む事は無いかと聞いたところ、フィリピンに帰りたいと苦しみながら答えました。たまたま、その場にいた官僚は、行政府の人間として法律を駆使し、彼女を帰国させました。その後にも何人かの乗務員の帰国の手助けを行いました。

また、コロナウィルスが未だ治癒していない患者に、新しく病棟を作成した病院から、その病棟を提供してもらいました。
このような色々な人々の努力で、我が国ではパンデミックのような大事に至りませんでした。

ただ一つ残念だった事として、医療チームDMATの一員の医師、池松壮亮が演じましたが、その家庭では夫であり父親である医師が新型コロナウィルスに関与していることから、妻は勤務先から出勤を断られ、子供が通っているところで仲間外れにされたりと、医師が悲嘆にくれるという事実もあったようです。

かかる色々な事実を過不足なく描き、この映画が封切りされました。

そしてこの映画を鑑賞した、当時この事案のフロントラインに参加した人たちからは多くの称賛の言葉が送られているそうです。